ファミリーマートの「お母さん食堂」は女性の社会進出支援だ

(画像:この騒動をきっかけに初めてファミマの「お母さん食堂」を購入してみました)

ガールスカウト日本連盟の、ジェンダー平等の実現を目指す教育プログラムを受けた女子高生3人が、「ファミリーマートの『お母さん食堂』の名前を変えたい!!!」というネット署名を集めて、ブランド名の変更を求めています。

この話題について、違和感を感じるポイントについて、まとめてみます。

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1  短絡的ではないか?

ジェンダー平等の実現を目指す教育プログラムを受けた女子高生が、身近なコンビニのブランド名に疑問を持ったということですが、教育を受けた途端に署名集めを始めて、ひとつの民間企業にブランド名変更の圧力をかけるのは、短絡的でしょう。

どういう考えを持とうと勝手だとは思いますが、まだ世の中のこと、仕組みをあまり知らないのに、教育に影響受けた途端に、ひとつの企業を攻撃することに違和感があります。

高校生だと、2000年8月に発売されたSMAPの香取慎吾さんの「慎吾ママのおはロック」も詳しくは知らないのではないでしょうか?

 

2 「お母さん食堂」は女性が社会進出をする話

ファミリーマートの「お母さん食堂」は、「慎吾ママ」の香取慎吾さんがお母さんの格好をしてCMをされています。

昔、「慎吾ママは料理上手」ということで、朝、忙しいお母さんのために「慎吾ママ」がかわりに朝食を作りに行くというテレビ番組も放送されていました。

「お母さん食堂」は、男性か女性かよくわからない「慎吾 母」が料理の腕をふるう、行列の絶えない食堂です。「お母さん」=「女性」と固定していないことは注目ポイントです。

 

「鉄板焼ハンバーグ やめなよ篇」は、2020年9月のCMです。

CMでは「慎吾 母」ほか3人のかっぽう着姿の女性が登場します。

 

「お母さん食堂」はどう考えても、お母さんが作った様な料理を提供する「食堂」の話であって、「家庭で食事を作るのがお母さん」という話ではありません。

むしろ「お母さん食堂」は、料理という得意分野を生かして仕事として、家庭内ではなく外部からお金を稼ぐ、女性が社会進出をする話といえるでしょう。

なのに「お母さん」という単語だけに反応して叩くのは、考えが浅いように思います。

 

3 「おふくろの味」「お母さんの味」とは?

「お母さんの味」という言葉はあまり馴染みがありません。一般的なのは「おふくろの味」という言葉でしょう。

「おふくろの味」とは、ウィキペディアによれば「幼少期に経験した家庭料理、もしくはそれによって形成された味覚、またそれらを想起させる料理を指す言葉」と定義されています。

日本では古くから炊事は母親(おふくろ)の仕事だったので、幼少期に食べた家庭料理が「おふくろの味」と呼ばれているわけです。

「おふくろの味」「お母さんの味」の概念は、自立して独立した生活を営むようになった人が、「美味しかった母親の味が懐かしい、でもいくら真似をしても自分では、なかなかあの味は出せないな」という母親への尊敬と愛情の思いが根底にあります。

 

4 コンビニだからこそ「お母さん食堂」

なかなか出すことのできない「お母さんの味」とは何でしょうか。

同じ料理であっても、各家庭によって入れている材料が違ったり、調味料の加え方が違います。一種のゆらぎがあるのです。

同じ料理であっても各家庭によって味が違います。

最初にそれを食べた子供はそれにあわせた味覚に育ちますから、「お母さんの味」がとても懐かしく美味しく感じるようになるのではないかと思います。

 

コンビニのお弁当やお惣菜はどんどん美味しくなりましたが、工場生産のため、ともすると平板化してしまいます。

個性化のひとつとして、「お母さんの味」、お母さんが作る「お母さん食堂」というブランドが提案されたのだと思います。

たしかに日本では古くから炊事は母親の役割でしたが、それを変えるために「お母さんの味」という言葉を使うな、というのではあまりに乱暴な話です。

 

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5 署名の説明文には「お母さん食堂」が社会に悪影響を与えている具体的なデータはない

少子高齢化や女性の社会進出、共働き世帯の増加、単身世帯の増加など環境の変化を背景に、ファミリーマートは「ファミ横商店街」というファストフーズお惣菜を展開しています。

「お母さん食堂」は2017年に商標登録の出願をして、「ファミ横商店街」の中の、オリジナル惣菜・冷凍惣菜のブランド名として2017年9月から積極展開しています。

お母さんに食事を作れ、といっているのではなくて、誰でもが手軽にそのまま食べることができるお惣菜を提供しているのです。

 

「料理するのは“お母さん”だけですか? ファミリーマートの『お母さん食堂』の名前を変えたい! 〜 一人ひとりが輝ける社会に 〜 」というネット署名では、「お母さん食堂」は、「お母さんが食事をつくるのが当たり前」という意識を植えつけてしまう「商品名」であると決めつけています。

「お母さん食堂」のように、「お母さんが食事をつくるのが当たり前」という意識を植えつけてしまう「商品名」は、子どもをはじめすべての人に対し、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)を深刻にする原因にもなります。

(出典:ファミリーマートの「お母さん食堂」の名前を変えたい!!!「change.org」)

しかし、この説明文には、ファミリーマートの「お母さん食堂」がどのように社会に悪影響を与えているかの具体的なデータはまったく提示されていません。

「世の中から、そのような類の名称をなくしたいから、ファミリーマートが名前を変えろ」と、根拠もなくお願いしているだけです。

 

6 会社は変更に伴う膨大な損失を被る

もうすでに多くの予算を使って商品展開中の「お母さん食堂」。「慎吾 母」のCM料だけでも莫大な金額でしょう。そうして3年間も展開してきたブランドを捨てろ、というのです。

女子高生3人が、それぞれひとりの消費者として、意見を伝えるのなら構わないと思いますが、ネット署名を集めてマスコミを巻き込んで圧力をかけるのは総会屋と似たような構造だと思います。

 

ファミリーマート側に何の過失もないのに、少数のうるさい抗議者とトラブルになるのをおそれて「お母さん食堂」というブランドを捨ててしまうと、会社は変更に伴う膨大な損失を被ることになります。

 

「お母さん食堂」の言葉の意味は前述したとおりです。そこには性別による役割の固定化などという意識はありません。

「お母さん食堂」が悪影響を与えているという具体的な根拠すらないのです。

それを「お母さんが食事をつくるのが当たり前」という意識を植えつけてしまう「商品名」と、一方的に決めつけて無くさせたとしても、「一人ひとりが輝ける社会に」なるとは到底思えません。

得られるのは、抗議者たちの成功体験と自己満足だけです。

 

7 まさに言葉狩り

叩きやすい場所だけ攻撃して損失を与えようとしている。どう言い訳しようと、実質的には、そういうことです。

損失を受けた会社を見て、他の企業が自粛することを狙っている。

ファミリーマートが折れてしまえば、次のターゲットが探し出され、そこが攻撃されていきます。

そうして、やがて萎縮効果で「お母さん」に類する単語を、日本では商品名や店名に使用することができなくなります。

まさに言葉狩りです。

この言葉狩りを止めなくてはいけません。

企業は自由に商品名を選択できる権利があります。



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