草津温泉の「ただれ療法」と時間湯の湯長制度廃止について

この記事は、草津温泉の時間湯のただれ療法についてです。

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ただれ療法

群馬県の草津温泉の効能について、斎藤幾久次郎(群馬大学医学部附属病院草津分院)さんの書かれた昭和37年(1962年)3月の温泉科学 第13巻 第1号の「草津温泉の医学的研究」では、次のように書かれています。

浴療法 草津温泉は強酸性であるため皮膚に対する刺激作用が強く、この温泉に1日数回ずつ連日入浴すると股陰部、腋窩(えきか)、肛門周囲、臍窩(さいか)等に皮膚炎が発生する。これを属に“ただれ”と称する。草津温泉には時間湯という特殊な浴法が行われている。すなわち時間湯とは47℃の高温の草津温泉に1日4回3分宛 連日入浴させて患者にこの“ただれ”を発生させ、これによって容易に治らない種々の慢性疾患を治癒させんとする一種の経験療法である。

http://www.j-hss.org/journal/back_number/vol13_pdf/vol13no1_001_003.pdf

58年前の文献ですが、これがいわゆる草津温泉の「ただれ療法」です。

 

吉村達也著『伊香保温泉殺人事件』には、草津温泉の時間湯について、次のような説明があります。

このただれによる痛みやかゆみは、入浴中には治まるが、ほぼ四時間経つと、またその症状が出てくるためにお湯に入る。すると、また治まる。このことから、身体の状態が自然と定期的な入浴サイクル-起床中に四時間おきに四回-を決めるという意味で時間湯の名前が生じたというのである。

ただれがひどくなる症状が起きてもそのまま時間湯の湯治を続行すると、やがて手足の先端や顔の皮膚がむけていき、いわゆる「一皮むけた」状態で新しい表皮が生じ、皮膚炎がある場合は、その治療の効果が現れはじめる。

(伊香保温泉殺人事件 吉村達也著)

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「時間湯」の湯長制度廃止

草津温泉における温泉治療をする「時間湯」での入浴者たちに入浴指導をする責任者が湯長です。

事前に湯治客から聞き取りをする湯長の行為について、黒岩町長が「医師法に触れる問診にあたる可能性がある。行政としては見過ごせない」として、2019年7月末で湯長制度を廃止しました。

かつては、湯長が「時間湯」の温泉治療の効果が出ているか、湯治客の“ただれ”を確認するといったことが行われていたらしく、女性客の“ただれ”を確認する行為が「セクハラ」にあたるという指摘も、湯長制度廃止の理由のようです。

最近は、女性の湯治客は女性の湯長が指導していたのでセクハラの心配はない、という反論もありました。



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