加藤清隆さんの誤読ツイートの釈明についての深読み(後編)…有田議員の名誉毀損訴訟についての論点整理

前回の記事、

加藤清隆さんの誤読ツイートの釈明についての深読み(前編)…RTがよくわからなかった?

では、政治評論家の加藤清隆さんのツイートの誤読がどのような理由により発生したのか、ツイッター初心者という観点から明らかにしました。

民間人である加藤清隆さんがすでにリツイート(RT)とツイートを混同したミスを撤回、謝罪したにもかかわらず、公人で国会議員でもある有田芳生 参院議員は、名誉毀損の民事訴訟を起こすと主張されているようです。

今回の記事では、「有田芳生 議員の名誉毀損訴訟」について、加藤清隆さんを弁護する視点から論点を整理してみたいと思います。

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加藤清隆さんは誤読ツイートを放置していた?

有田芳生議員は、加藤清隆さんのツイート直後から、加藤さんに対して「誤りを指摘されても完全黙秘」、無視をしていると批判しています。

これに対して、加藤清隆さんは、「ツイッターを始めて1ヶ月の初心者だったのでそれまで気が付かなかっただけ」と釈明されています。

ツイッター初心者の加藤清隆さんは、タイムラインを見ているだけで、「誤りを指摘する」リプライなどは一切確認されていなかったようです。

そうした状況なのでツイート削除まで2週間かかっていますが、単純に誤りに気がつくまでそれだけの時間がかかったということだと思います。

誤読を知っていて、意図して放置していたというわけではないようです。

加藤清隆さんは、誤解を招く表現に気が付いた時点で誤りを認め削除、謝罪をしています。

「安倍総理が親書を尻の下に」というツイートのデマを指摘されても、いまだにリツイートを削除しない有田議員とは大違いです。

 

有田議員のストローマン

ストローマンとは、相手の意見の一部を誤解してみせたり、正しく引用することなく歪めて批判する詭弁術です。

問題とされている削除済みの加藤清隆さんのツイートの文章をもう一度確認してみます。

立憲・有田芳生議員が「F◯◯K YOU VERY MUCH,PRESIDENT TRUNP」との横断幕を掲げた。御丁寧に中指を立てた絵まで添えてある。これは丸山議員の「戦争」発言どころじゃない、他国の元首に対する極めて非礼な行為。立憲は当然、同議員を除名処分にし、議員辞職勧告決議案を提出するんでしょうね?

今回、デマだと指摘されている誤読部分の記述は、「立憲・有田芳生議員が●●との横断幕を掲げた。御丁寧に中指を立てた絵まで添えてある。」です。

 

これに対して、有田議員のツイートでは「那覇にいた私が同時刻に両国でこの横断幕を掲げた」と、加藤清隆さんのツイートを正確に引用せずに、「両国で」という元にはなかった言葉を付け加えて、批判し続けています。

これは相手の言葉を正確に引用していません。明らかにストローマン論法です。

加藤清隆さんは「両国で」「東京で」などということは一度も発信していません。

それはこちらの謝罪ツイートでも、同じです。



「掲げる」の意味

「掲げる」には次の意味があります。

① 人目につくように高く上げる。 「旗を-・げる」
② 手に持って高く上げる。頭上に持ち上げる。 「たいまつを-・げる」
③ 布状の垂れ下がったものの下端を上げる。 「簾(すだれ)を-・げる」
④ 主義・方針などを示す。 「スローガンを-・げる」
⑤ 新聞・書物などに載せる。 「社告を-・げる」
⑥ 灯火をかきたてて明るくする。 「火あかく-・げなどして/源氏 帚木」
(三省堂 大辞林)

有田芳生議員は、①の意味としてだけ捉えている、または解釈を①の意味に限定するために「両国で」などという元にはなかった言葉をストローマンで付け加えているかのどちらかでしょう。

しかし、「掲げる」には、④の「スローガンを掲げる」、⑤の「新聞・書物などに載せる 」という意味もあります。

自分の「主義・方針」を、ツイッターなどに載せることも「掲げる」なのです。

繰り返しになりますが、加藤清隆さんは、有田議員が主張する「両国で掲げた」などとは書いていません。

「掲げる」の意味が争点のひとつになるでしょう。

 

有田議員の「頑張れ」

有田芳生議員は、問題の5月26日、現場で国賓のトランプ大統領に抗議活動を行う人たちに「頑張れ」とエールを送り、問題となっている「横断幕の画像」をリツイートしています。

 

※RTは同じタイムラインに「有田芳生さんがリツイート」と表示されるが、ツイッター初心者にはRTとツイートの区別がつかない場合もある。

「路上の同志」ということでリツイートしたということですので、これは批判目的のリツイートではないようです。

ネットで騒ぎになったのは、有田議員がこの問題の横断幕のリツイートとともに、両国でトランプ大統領に過激な抗議活動をする人たちに応援のツイートをしていたからです。



加藤清隆さんのツイートは二次的なもの

誤読がみられた加藤清隆さんのツイートは、リンクはありませんがおそらくアノニマスポストさんの記事を見ての論評です。

つまり加藤清隆さんのツイートは下流の発信源であり、最初の発信源ではありません。

 

有田芳生議員の侮辱画像RTのネタは5月26日の18時04分には、5ちゃんねるにスレッドが立てられています。これにより、保守速報さん(なぜか現在は記事削除済み)をはじめ複数のまとめサイトが記事にしています。

https://hayabusa9.5ch.net/test/read.cgi/news/1558861469/

さらに加藤清隆さんのツイートには、当初より加藤清隆さんの誤読を指摘するコメントが複数付けられています。

 

5月28日の虎ノ門ニュースでは、百田尚樹さんが、番組で有田議員の問題のリツイートについて取り上げました。

このように、「有田議員が国賓のトランプ大統領に対する侮辱ツイートをリツイートした」という正確な方の情報は、すでに多くのまとめやネット動画などにより拡散されており、その記事を見た加藤清隆さんだけが誤解を招く表現をしたとしても、情報としては下流の二次的なツイートに過ぎず、それをそのまま信じる人はごく少数です。



加藤清隆さんを批判するまとめ

一方、加藤清隆さんの誤読を批判するNAVERまとめもすぐに作られています。有田議員はこのまとめで、加藤清隆さんの誤読ツイートの存在を知ったようです。

加藤清隆氏が大拡散デマ「立憲・有田芳生議員がF◯◯K YOU…TRUNP横断幕を掲げた」 – NAVER まとめ

このまとめは、加藤清隆さんのツイートの数時間後の5月27日0時33分には最初の記事引用ツイートがされています。有田議員も引用されていますが、その後も多くの人により記事引用ツイートがされています。

加藤清隆さんを批判する側でも、加藤清隆さんの二次的な誤解ツイートをそのまま信じていた人は少ないのです。

 

加藤清隆さんが最初の発信源で、それを元に情報が広がったのなら、多くの人に誤解が広がったでしょう。ですが、加藤清隆さんのは二次的に誤解したツイートにすぎませんから、ほとんど大勢に影響はなかったのではないかと考えられます。

重要なポイントは、有田芳生議員のアカウント@aritayoshifu のツイッターを確認しに行けば、簡単に誰でも真実を知ることができることです。自分で確認する作業を怠る人以外は間違いようのない話です。

 

実は加藤清隆さんのツイートが多くの人にリツイートされたのは、前半の誤読の部分ではなく、後半の「これは丸山議員の「戦争」発言どころじゃない、他国の元首に対する極めて非礼な行為。立憲は当然、同議員を除名処分にし、議員辞職勧告決議案を提出するんでしょうね?」の論評が共感を集めたからではないでしょうか。

 

誤読の過失割合

文化人放送局の生放送で、加藤清隆さんが次のような釈明をされています。

有田議員がリツイートしなければ、私、そもそもこの記事、ツイッターそのものに気づくわけはないので、それ相応のそこに責任は(有田議員にも)あるのではないかなと。

(怒っていいとも6月13日収録より 加藤清隆さん、高橋洋一さん)

加藤清隆さんは、ミスの過失割合が有田芳生議員にもあると考えておられるようです。

 

立憲民主党は「天皇制に反対」または「反アメリカ」の立場を掲げている政党ではないと理解しています。

そのような立憲民主党の国会議員が、新しい天皇陛下と令和のお祝いに外国からいらっしゃった国賓に、このような汚い言葉のメーセージをリツイートで送ることに違和感があります。この違和感から大きくネットメディアがこれを取り上げ、それを見たツイッター初心者の加藤清隆さんがツイートとリツイートを誤読したというのが今回の事件のあらましです。

 

現場で、市民活動家が抗議活動をするのは、表現の自由で問題がないと考えられます。

しかし、国民の代表である国会議員が天皇陛下のお客様である国賓に対する侮辱リツイートを拡散することとは意味が違います。国益を損する可能性もある行為です。国民に対しての、その主旨についての説明責任があるはずです。

このような賛否両論があるような画像ツイートを無責任にリツイートするのではなく、国会議員として責任のあるコメントを付けて発信していれば、加藤清隆さんのような誤読は起こらなかったでしょう。

ツイッター初心者の加藤清隆さんのミスの責任の一部は、有田議員のリツイートにもある、という過失割合の考え方には否定できないものがあります。



RTはツイートと同じ

加藤清隆さんの論評ツイートには一部誤りがありましたが、有田芳生議員が国賓に対する侮辱弾幕ツイートをリツイート拡散しているのは事実です 。リツイート行為はツイートと同じように責任があるという判例があるようです。

「リツイート」も場合によっては違法になる? 東京地方裁判所平成26年12月24日判決

有田議員はこの侮辱リツイートの問題をすり替えようとして加藤清隆さんのミスだけを狙って批判している可能性があります。

 

名誉毀損?

有田芳生議員は、国会議員として国賓に対する非礼なコメントと画像をリツイートしたことについての説明を一切行っておりません。

それにどうも、有田議員は批判目的でのリツイートではなかった疑いもあります。

加藤清隆さんにはリツイートとツイートの混同がありましたが、ツイートだろうが、リツイートだろうが、有田議員ご自身の主張と合致する内容の横断幕であるならば、間違われても名誉が毀損されたと騒ぐようなものではないでしょう。

まして、(加藤さんは)誤解のツイートはすでに削除、謝罪済みです。

例えば、立憲民主党の党首のスローガンを掲げるツイートをリツイートしていて、仮にそれが有田議員のツイートであると誤解されても、名誉毀損だとして大きな問題にすることはないはずです。

今回の横断幕が「問題だ」、あるいは「恥ずかしい」と考えていらっしゃるのなら別ですが。いったい、どちらなのでしょうか?



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