(長妻昭 議員の今年の漢字は「偽」だそうです。)
前回の記事(下)で指摘した数字の間違いについて、立憲民主党の長妻昭 衆院議員が訂正ツイートをしています。
https://twi55.com/nagatsuma20181214/
ですが、訂正したふりをして、新たな主張もしているようです。
技能実習生の死傷者割合は異常に高い?
長妻昭 議員は「外国人労働者が昨年だけで2494人も労働災害で死傷。なお、国際研修協力機構(JITCO)の調査によると2016年度に外国人技能実習生は1844人が労働災害で死傷しています。」と主張しています。
お詫びして訂正致します。
誤 外国人技能実習生が昨年だけで2494人も労働災害で死傷。
正 外国人労働者が昨年だけで2494人も労働災害で死傷。なお、国際研修協力機構(JITCO)の調査によると2016年度に外国人技能実習生は1844人が労働災害で死傷しています。 https://t.co/vp2FzgYurE— 長妻昭 (@nagatsumaakira) 2018年12月14日
外国人労働者数は昨年2494人(休業4日以上)、労働災害で死傷しているが、別の調査によると2016年度に外国人技能実習生は1844人も死傷しているのだと主張しているようです。
外国人技能実習生数は平成29年度(2017年)で、外国人労働者数の20.2%ですから、ぜんぜん数字が合わないですよね。
どういうことでしょうか?
つまり、「2494人と間違えたけど、ホントはもっとたくさんの死傷者数がいるんだぞ(俺は間違ってない)」と言い訳しているようにも見えます。
さっそく、長妻昭 議員のツイートを鵜呑みにしている人もいるようです。
2016年で比較すると、死傷者割合は…
全労働者 117910人/6673万人=0.18%
外国人労働者 2211人/1083769人=0.20%
技能実習生 1844人/211108人=0.87%確かに技能実習生の死傷者割合は異常に高いということが言えますね。 pic.twitter.com/5m9nWBn0ug
— 01687738004 (@168v8004) 2018年12月14日
技能実習生 1844人を21万1108人で割ると、1000人あたり8.7人です。
厚生労働省の 産業別死傷年千人率(休業4日以上)平成8年~平成23年 によれば、
平成23年の全産業の死傷 年千人率は2.1
林業が27.7 漁業が15.7 建設業が5.2 鋳物製造業が8.2 農業が8.8
になっています。
これだけを見れば、外国人技能実習生の8.7は高い割合のようにも見えます。
これだけを見れば……ですが。
では、長妻昭 議員の「2016年度に外国人技能実習生は1844人が労働災害で死傷」の出典はどこでしょうか?
出典は?
https://t.co/binDmjAnKb
JITOCOの「かけはし」2018年4月133号p8に1844人という数字がありましたが【休業4日未満の災害を含む】とあり、この数字を休業4日以上の死傷者と並列して比較する意味が全くわかりません。 pic.twitter.com/y0AsGVPQtp— ♡シュガーlazykitty ♡ (@caazzy) 2018年12月14日
たしかに、このページに 、
2016年度に発生した技能実習生の実習中における業務災害(休業4日未満の災害を含む)の被災者数は1844人で、これに通勤災害の122人を合わせた被災者総数は1966人でした。
と書かれています。
ただ、「休業4日」という数字が出てきます。
この数字、気になりませんか? この4日というのは何でしょうね?
休業4日以上と休業4日未満
業務上のケガや病気の治療のために休業したときに、休業4日目から、労災保険で賃金の補償として給付を受けることができます。3日目までの期間は待機期間と呼ばれ、この期間の補償を事業主が平均賃金の60%を支払うことで行うこととなります。
休業補償給付が受けられるのが4日目からなのです。
独立行政法人労働安全衛生総合研究所の 休業 4 日以上と 4 日未満の死傷災害の比較 報告書 に、「休業4日未満労働災害を対象とした労働者死傷病報告は提出率が低い」とあります。
日本人の休業4日未満労働災害はすべてが報告されているわけではないようです。
休業4日未満に死亡者はいない
傷病部位を見ると、休業4日未満で一番多いのは「頭部他」で、ワゴン車等で最後部ドアが風などで自然に閉まる時に頭をぶつける事故がとても多いとしています。
各種作業中にいろいろなところに頭をぶつける例。
患者に殴られた看護師、乗客に殴られたタクシー運転手、駅員等があげられています。
どちらにしろ、考えてみればありがちな事故です。
いずれにしても休業4日未満なのですから、軽症で、「休業4日未満労働災害データ」には死亡者は含まれません。
長妻昭議員の使ったトリック
長妻昭 議員が新しく持ち出してきた「1844人が労働災害で死傷」という数字は、この軽症の「休業4日未満労働災害データ」も加えた「休業4日未満の災害を含む被災者数」の数字のようです。
違和感があるのは、次のようにツイートしていることです。
「外国人労働者が昨年だけで2494人も労働災害で死傷。なお、国際研修協力機構(JITCO)の調査によると2016年度に外国人技能実習生は1844人が労働災害で死傷しています。」
ツイートの前半の2494人は「休業4日以上」のデータであるのに、後半の1844人は「休業4日以上」+「休業4日未満」のデータになっています。
なぜ、このような異なるデータを並べてツイートするのでしょうか?
比較できないデータですので、外国人技能実習生の労働災害の死傷者数割合が高いか低いか、これだけでは判断ができません。
死亡者のいない「休業4日未満の被災者数」も「死傷者」と呼ぶのもおかしな話です。
……怪しい。
なんとなく13日に家に来た怪しい勧誘員を連想してしまいました。
昼間、
とつぜん、
怪しいお兄さんが、「フレッツ光のルーターのレンタル料がうち(の社)通すと無料になるんです。まだ切り替えていませんね」と訪問して来て、あまりに怪しいんでお帰りいただいたんだけど。
どーいうこと?— 以下略ちゃん™ (@ikaryakuchan) 2018年12月13日
加筆
記事前半でツイート引用させていただいた長妻昭 議員を信じてしまった方も、トリックに気がつかれたようです。
比べるデータ間違っているから災害内容で比較したり色々やらないと数字が出ないです
技能実習生は労働初心者なのでケガが多いのは当然だと思います。
日本人込みでトータルで考えると、あれ❔ってなると気付きますが
実習生に災害が多いのは言葉の問題で危険性の認知が出来てないも原因だと思います。— puppu (@puppu96neko) 2018年12月14日
ああ、つまり長妻さんが新たに出してきた1844人という数字は休業4日以上のものではなく、それ以下の軽微な案件も含んだ数字だってことですね!
貼っていただいた資料には技能実習生の2016年の数字は無いけれど、おそらくは500人以下になりそうですね。— 01687738004 (@168v8004) 2018年12月14日
あと、技術系・肉体労働系の仕事の初心者とそれ以外を含んだ全体を比較したことも不適切でしたね。
迂闊でした。
となると技能実習生が不当に悪条件で働かされていることを死傷者数で示すとしたら、同じ仕事内容・練度の人々の数字と比較する必要があり、相当に難しそうですね。
私にはお手上げです…— 01687738004 (@168v8004) 2018年12月14日
私もミスがあったから他人のこと強く言えませんが、長妻さんも結構仕事が雑ですね…
まず外国人労働者全体と技能実習生を混同し、訂正後の数字も最初に出した数字とは比較できないものだった。
さらにこうして検証すると死傷者数というアプローチは彼が主張したいことの補強材料になってないわけで。— 01687738004 (@168v8004) 2018年12月14日
しかも考えてみれば、長妻さんの資料は野党合同ヒアリングの配布資料です。
それを堂々と出してきたということは、ヒアリングではこういう検証が行われなかったということ。
彼らの議論はツイッター上のちょっとした遣り取り以下ってことで、これは結構情け無いことではないか? pic.twitter.com/wkcUkfDdDX— 01687738004 (@168v8004) 2018年12月14日