「参入障壁としての石破4条件」と「規制改革のための石破4条件」ふたつの石破4条件
逢坂 誠二さんが、いわゆる石破4条件についての質問
11月15日の衆議院 文部科学委員会で、北海道獣医師政治連盟から10万円の献金を受け取っている立憲民主党の逢坂 誠二さんが、いわゆる石破4条件についての質問を行いました。
逢坂 誠二さんは「特区の条件は満たされていない」などと追及しました。
内閣府大臣政務官の長坂 康正さんは、「条件が満たされていないと考える側が証明すべきこと」という意味のことを回答しました。
議論は平行線です。
内閣府大臣政務官 長坂 康正 「規制改革の基本的な考え方について申し上げますが、自治体や民間から提案が寄せられたときは、できない理由を探すのではなく、どうしたらできるかを前向きに議論すべきであるということでございます。これは平成26年2月に閣議決定した国家戦略特区の基本方針だけでなく、構造改革特区や総合特区の基本方針として閣議決定したものでございます。特区の基本方針は、規制を所管する省庁が改革が困難だと判断した場合には、その正当な理由の説明を適切に行うことを求めております。その説明がなされない場合は提案に基づく規制改革を進めていくべきだと考えております」
そもそも石破4条件とは何でしょうか?
石破4条件とは、2015年6月30日に閣議決定された
のp.121に書かれた一文です。
この、(地方主導による大胆な規制改革の実現)の項目の
⑭獣医師養成系大学・学部の新設に関する検討
「現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化し、ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになり、かつ、既存の大学・学部では対応が困難な場合には、近年の獣医師の需要の動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討を行う。」
の抽象的な一文、これがいわゆる石破4条件です。
この190ページもある「日本再興戦略」とは何かという話になりますが、「日本再興戦略」とは法律や規則ではありません。
「日本再興戦略」は安倍政権が毎年出している、日本の経済成長、GDPを増やすために「こういうことをやりますよ」という公約みたいなものです。
「こんなことをします、あんなこともします」と実行することを列記しているもので、何かを規制したり排除したりすることは一切書かれていません。
2015年度(年度末は2016年3月)を目標にした経済成長のための政策の公約にすぎません。
ですからあくまでも実施することが前提なのです。
「既存の大学・学部では対応が困難な場合」をどう解釈するか
野党やマスコミが、「石破4条件が満たされていない」と言う場合はこの記載内容の「既存の大学・学部では対応が困難な場合」を取り上げることが多いようです。
「既存の大学・学部では対応が困難な場合」の記載をどう解釈するかの違いなのです。
どのようなことであっても、お金と時間をかければ既存の大学・学部で対応が可能であるに決まっています。
逆に、現在の既存の大学の施設、教員ですぐに対応できない部分は、新しい大学を建設したほうがコストがかからないという考え方もあります。
「既存の大学・学部では対応が困難な場合」とは、このように抽象的で、解釈の仕方でどのようにも捉えることができる文章なのです。
「日本再興戦略」は排除のための「認可の条件」ではありません。
「全国的見地から本年度内に検討を行う。」の部分が一番重要な記述と解釈すべきです。
それでは、野党の言う認可の条件のような排除のための「石破4条件」とは何でしょうか?
そこを理解するには石破茂さんの立ち位置を理解する必要があります。
100万円の献金と石破茂さん
平成24年(2012年)12月27日に石破茂さんは、日本獣医師政治連盟から100万円の献金を受け取っています。
【加計学園 行政は歪められたのか(上)】新設認めぬ「石破4条件」は獣医師会の政界工作の「成果」だった! 民主党政権でも献金攻勢… – 産経ニュース https://t.co/ph74LpNiSB @Sankei_newsさんから
— 以下略ちゃん™ (@ikaryakuchan) 2017年11月17日
産経新聞のこの記事によれば、石破茂さんは平成27年(2015年)9月9日には「学部の新設条件は大変苦慮しましたが、練りに練って、誰がどのような形でも現実的には参入は困難という文言にしました…」と、元衆院議員で政治団体「日本獣医師政治連盟」委員長の北村直人さんと、公益社団法人「日本獣医師会」会長で自民党福岡県連会長の蔵内勇夫さんの2人に話したとされています。(石破茂さんは否定しているそうです)
北村直人さんは元衆議院議員で小泉政権の農林水産副大臣、政界に献金をした日本獣医師政治連盟の委員長で、獣医学部の新規参入をどうしても止めさせたい側の中心人物です。
野党の言う石破4条件の基準「北大、東大より上」は閣議決定された基準ではない
加計学園追及チームの民進党の桜井充さんなどは「加計学園は北大、東大より上なのか?」などと繰り返し発言しています。
この「北大、東大より上」という排除基準は、閣議決定された「日本再興戦略」には書かれていません。
閣議決定された「日本再興戦略」には、「現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化し、ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになり、かつ、既存の大学・学部では対応が困難な場合」とだけ書かれています。
この抽象的な一文だけです。どこにも「北大、東大より上でなければダメ」などという言葉はないのです。
しかも、排除基準ではなくて、認可検討を実行することが前提の一文です。
では、「北大、東大より上でなければダメ」の排除基準の元ネタはなんでしょうか?
実は、この「北大、東大より上でなければダメ」は閣議決定されたものではなく、日本獣医師政治連盟から100万円をもらっている石破茂さん個人の新設獣医学部の排除基準なのです。
石破茂さんが考える参入障壁のための石破4条件
すでに地方創生担当大臣が石破茂さんから山本幸三さんに変わっていた2017年6月27日に公開されたイシバチャンネル第76弾で、石破茂さんは次のように自分の考えを語っています。
50年以上認めていなかった獣医学部を新しく作るとすれば、新しく原則がいるよね。
第一の条件としては、新しいニーズ、「たとえば感染症対策とか生物化学兵器対策とか」、「アメリカとかイギリスの軍隊には獣医の軍人さんがいるんですよ。軍馬だけじゃなく、生物化学兵器に対処するためには獣医の軍人がいる」。
もうひとつは「新しいニーズに対応するだけの立派な教授陣、立派な施設とか、そんなものがありますよね、それは東京大学農学部獣医学科でもできないし、北海道大学農学部獣医学科でもできないし、この新しい学校でなければできませんよね、というのが条件ですよね」
などと具体的な条件を語っています。
「石破4条件など存在しない、これは安倍内閣で閣議決定された安倍4条件だ」、などとも石破茂さんは語っています。
この具体的な内容の石破4条件が、さも「日本再興戦略」に書かれていて、最初から安倍内閣で合意されていたかのように語っていますが、閣議決定された「日本再興戦略」にはそのような記述はありません。
「北大、東大でもできないこと」などという新設大学には事実上不可能な具体例を付け加えて、勝手にハードルを極度に吊り上げたのは石破茂さんです。
あくまでもこれは石破茂さんの意見でしかなく、安倍内閣で閣議決定されたものではありません。
100万円の献金を貰っている石破茂さんが作った、新設獣医学部排除のための不可能とも思える無理に吊り上げた参入規制なのです。
ふたつの石破4条件
「石破茂さんが考える参入障壁のための石破4条件」と「閣議決定されたいわゆる石破4条件」は別のものです。
このことが理解できれば、すべての謎は解決します。
地方創生担当大臣が2016年8月3日に、石破茂さんから山本幸三さんに変わりました。
石破茂さんが担当大臣でなくなってしまったために石破4条件を「参入障壁」として利用できなかった、それだけの話です。
ワーキンググループなどで積み上げて「日本再興戦略」に書かれた条件をクリアしたと政府側が総合的に判断したのであれば何の問題もありません。この件はそれで終わりです。
もともと「日本再興戦略」とは、経済成長のために実施するリストであって、排除のための参入障壁リストではないのですから。
加計特区認定、政府「問題なし」 野党「条件満たさず」https://t.co/KiXIK3VztZ
野党側は獣医学部の新設の前提として、政府が国家戦略特区で規制緩和を認めた過程を問題視し、「特区の条件は満たされていない」などと追及したが、政府・与党側は「手続きに問題はなかった」と主張。議論は平行線— 以下略ちゃん™ (@ikaryakuchan) 2017年11月17日
いつまでも、「石破茂さんが考える参入障壁のための石破4条件」を基準に考えている野党やマスコミと、政府側との議論が平行線なのは、当然すぎる結末でしょう。