安倍首相の判断ミスだという「中央日報」のミスリード記事

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対日本輸入は対日輸出より大幅に減少

韓国の日刊紙「中央日報」が8月21日に、「安倍晋三首相の判断ミスだった。日本政府が韓国を相手に経済報復を始めた7月、対日本輸入は対日輸出より大幅に減少したことが確認された。」という記事を書いています。

「中央日報」がいうには、

  • 今年7月の日本企業の対韓輸出は、昨年の7月と比較して5兆200億ウォン減少した。
  • 対して韓国企業の対日輸出は1兆1700億ウォン減少に過ぎなかった。
  • これは日本企業が韓国企業よりも損失が大きかったと解釈できるので、日本が7月4日から韓国に対して「フッ化ポリイミド、レジスト、高純度フッ化水素」の輸出管理を強化、8月2日の韓国の「ホワイト国除外」は、安倍晋三首相の判断ミスだった。

ということらしいです。

安倍首相の判断ミス…輸出減少は韓国1兆ウォン、日本5兆ウォン(中央日報)

 

この中央日報の記事について、「反論してみて。君らから学びたい」と加藤清隆さんにリプライを付けている人がいたので、

ネトウヨではありませんが、この記事について書いてみたいと思います。



半導体など製造装備の落ち込みがひどい

中央日報は、この記事の最後で次のように書いています。

 韓国と日本の貿易減少は日本政府の統計でも確認できる。日本財務省が19日に出した7月の貿易統計によると、韓国に対する輸出額は前年同月比5.9%減の4363億円(4兆9500億ウォン)。日本財務省は「韓国に対する輸出が昨年11月から9カ月連続でマイナスとなった」と伝えた。

品目別には原動機が47.4%減少した。半導体など製造装備(-41.6%)、荷役機械(-39.5%)、金属加工機械(-36.6%)の減少幅も大きかった。韓国に対する原料品の輸出も23.4%減少した。一方、化学製品の対韓輸出は前年同月比7.5%増加した。日本財務省は「(輸出制限した半導体素材の)品目分類がないため、これによる輸出減少があったのかは確認できない」と伝えた。(中央日報 2019.08.21)

 

ポイントは、

  • 韓国に対する日本からの輸出が昨年11月から9カ月連続でマイナスとなった
  • 半導体など製造装備(-41.6%)の落ち込みがひどい



 

「半導体関連の3品目についての輸出規制」とは無関係な半導体不況

2019年6月4日に日本経済新聞が、「半導体市場の景気減速」についての記事を書いています。

半導体市場12%減 19年、「リーマン」以上の急減:日本経済新聞

日本経済新聞によれば、世界半導体市場統計(WSTS)は4日、2019年の市場規模が4120億ドル(約44兆円)と、前年比12%減るとの予測を発表したそうです。それまでは、2.6%の成長を見込んでいました。

半導体市場は「シリコンサイクル」と呼ばれる3~4年おきの景気変動を繰り返してきた。今回の減速は17~18年に高い成長が続いた反動もあるとはいえ、減少率はリーマン・ショック後の09年(9%減)を上回る。IT(情報技術)バブルが崩壊した01年に32%減って以来の水準だ。(日本経済新聞 2019.06.04)

 

シリコンサイクルとは、半導体業界に特有の構造的な景気循環のことで、約4年周期で好況と不況を繰り返すとされています。

韓国の半導体製造装置の輸入が大きく減っているということは、サムスン電子、SKハイニックスなど、韓国の半導体メーカーがすでに減産や設備投資の延期を行っているのではないかということが読み取れます。それだけ全世界向けの売上が落ち込んでいるということになります。

安倍政権の「半導体関連の3品目についての輸出規制」とは無関係に、昨年11月から、半導体メーカーの不況が忍び寄ってきていた、というだけの話なのです。

 

新たな通信規格「5G」などによって、いずれは回復するでしょうが、それまでは時間がかかると思われます。

サムスン電子は、2010年の売上高が韓国のGDPの22%、株式時価総額は韓国株式市場の25%を占めています。半導体メーカーの減速は、韓国の市場経済に深刻な影響をもたらすでしょう。



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