日本人の神話的思想について ビジネス習慣における神話的思想の影響

神話的思想を現代社会に当てはめるのは非常に面白い試みですね。かつての八百万の神々や「ムスビ」の概念は、形を変えて現代のオフィスや人間関係の中に脈々と受け継がれています。

具体的に、以下の3つの側面から深掘りしてみましょう。


1. 「和」の精神と「根回し・合意形成」

神話における「八百万の神々が河原に集まって相談する(天安河原の合議)」というエピソードは、現代の日本的意志決定プロセスのプロトタイプと言えます。

  • 全員一致の尊重: 独裁的なリーダーが決めるのではなく、関係者全員の顔を立て、納得感を得るまで話し合う「根回し」は、まさに和を重んじる神話的合法的プロセスです。

  • 空気を読む: 言語化されない「場の神聖さ(空気)」を損なわないことが、論理的正当性よりも優先されることがあります。

2. 「ムスビ」と「パートナーシップ・縁」

神道における「産霊(むすひ)」は、異なるものが結びついて新しい命や価値が生まれるエネルギーを指します。

  • 「ご縁」を大切にするビジネス: 単なる契約上の損得勘定だけでなく、「せっかくのご縁ですから」という言葉に代表されるような、継続的で情緒的な関係性を重視します。

  • 共創(Co-creation): 競合他社とも適度な距離感で共存し、必要に応じて手を組む柔軟さは、万物に価値を認める多神教的な発想に近いものがあります。

3. 「清明心」と「ブランド・品質管理」

「汚れ(けがれ)」を嫌い、「清らかさ」を尊ぶ感覚は、日本の製造業やサービス業の根幹にあります。

  • 「5S」と掃除の精神: 職場を清めることは、単なる衛生管理ではなく、心を整え、仕事に魂を込める神聖な儀式に近い意味を持ちます。

  • 不祥事への過敏さ: 現代でも企業不祥事が起きると、法的責任以上に「世間を騒がせた(場を汚した)」ことに対する謝罪(禊)が求められます。これは罪の意識(Guilt)よりも恥の意識(Shame)を重視する神話的倫理観の現れです。


ビジネス習慣における神話的思想の影響(まとめ)

項目神話的思想のルーツ現代のビジネス・対人関係
意思決定八百万の神の合議根回し、全員一致の会議
品質・環境禊(みそぎ)・清明心5S活動、完璧主義、誠実さ
ネットワーク産霊(むすひ)「ご縁」、紹介重視、長期取引
組織論役割分担(記紀神話)職能給よりも「役割」や「場」への帰属

4. まとめと考察 「中今(なかいま)」の功罪

現代の日本人が「長期的なビジョンを描くのが苦手」と言われる一方で、「現場のトラブル対応や改善(カイゼン)に異様に強い」のは、「中今(今、この瞬間に最善を尽くす)」という思想の表れかもしれません。未来の設計図よりも、目の前の顧客や製品に誠実に向き合うことに最大の価値を置くからです。



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