ジャーナリストの伊藤詩織さんが監督を務めた映画「Black Box Diaries」が、第97回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門で受賞を逃しました。授賞式は2025年3月2日(日本時間3日)にアメリカ・ロサンゼルスのドルビーシアターで行われました。この作品は、日本人監督として初めて同部門にノミネートされるという歴史的な快挙を達成していましたが、残念ながら受賞には至りませんでした。
日本の司法制度に疑問を投げかける内容
「Black Box Diaries」は、伊藤詩織さんが自身が受けた性暴力事件をテーマに、自ら取材を重ねて制作したドキュメンタリー映画です。事件の真相を追う過程や日本の司法制度に疑問を投げかける内容が特徴で、海外では高い評価を受けています。
2024年1月のサンダンス映画祭での初上映を皮切りに、世界50以上の映画祭で上映され、18の賞を獲得するなど注目を集めてきました。また、第78回英国アカデミー賞のドキュメンタリー部門にもノミネートされるなど、その影響力は国際的に広がっています。
関係者の許可を得ていない音声
しかし、この映画をめぐっては、制作過程での議論も起きています。伊藤さんの元代理人弁護士が、裁判以外では使用しないと約束していたホテルの防犯カメラ映像や、関係者の許可を得ていない音声が作品に含まれていると指摘しました。これに対し、伊藤さん側は「映像はプライバシーに配慮してCGで加工したものだ」と説明していますが、日本国内での公開はまだ実現しておらず、課題が残っている状況です。
授賞式では、長編ドキュメンタリー部門の賞は「No Other Land」に贈られました。伊藤詩織さんはレッドカーペットに登場し、NHKの取材に対して「最高の思い出」と語るなど、前向きな姿勢を見せていました。受賞は逃したものの、ノミネート自体が日本人監督にとって初めての偉業であり、その意義は大きいと言えます。
日本作品が3つも候補に
日本からは他にも、山崎エマ監督の「Instruments of a Beating Heart」や西尾大介監督の「あめだま」がそれぞれ短編ドキュメンタリー部門と短編アニメーション部門にノミネートされていましたが、いずれも受賞には至りませんでした。それでも、日本作品が3つも候補に挙がったことは、今後の映画界への期待を高める出来事です。
まとめ
伊藤詩織さんの「Black Box Diaries」は、受賞こそ逃しましたが、そのメッセージ性や国際的な評価を通じて、多くの人々に影響を与え続けています。今後、映像トラブルが解決されて日本での公開がどのように進むのか、注目が集まります。