(御成橋にある川幅日本一の碑 ウィキペディアより)
リアルタイム検索で人気ツイートを見ていたら、台風19号通過後、一面、水浸しの川越線の車窓風景の動画が出てきました。
「千と千尋の神隠し」の海原鉄道
川越線 pic.twitter.com/Igc5u1x6jz
— 鈴木 (@mentaiko1122) 2019年10月13日
まるで、映画「千と千尋の神隠し」に登場する海原鉄道のようです。
映画のカオナシと千尋が乗る海原鉄道の風景は、氾濫した「海原」の中にぽつんと民家や踏切が浮かんでいます。
これは1959年に発生した伊勢湾台風の風景をモデルにしたといわれています。
動画も、最初は、台風19号による洪水かな? と思ったのですが、調べてみると、どうもそういうわけでもないようです。
埼玉栄総合グラウンド
動画の途中に「埼玉栄総合グラウンド」の表示が写っています。
「埼玉栄総合グラウンド」は、埼玉栄高校のグラウンドで、埼玉栄高校のHPには次のように紹介されています。
荒川河川敷内の緑豊かな環境の中に、野球練習場が3面、サブグラウンドが2面、サッカーグラウンドが2面、アメフト用グラウンドが1面、400mトラックがあります。(埼玉栄高校HPより)
荒川河川敷内にある広大なグラウンドのようです。
つまり、川越線の車窓の動画に写っているのは、広大な荒川河川敷全体に川の水が流れている状態です。
荒川の川幅は日本一
荒川は、埼玉県と東京都を流れ東京湾に注ぐ河川です。
川幅は、埼玉県鴻巣市・吉見町にある御成橋付近で、2,537 mあり、日本一になっています。
(2位は、高知県および徳島県を流れる吉野川の2,380 m)
こんなかんじです。
ふだんの川幅は、30 mあるかないかくらいのようですが、いざというときのために堤防から堤防までの距離をこれだけとっているようです。
動画の川越線から見える「埼玉栄総合グラウンド」は、この川幅日本一の地点から約15 km下流に位置しています。
明治43年の大洪水
1910年(明治43年)8月、いまも記録に残る荒川の大洪水が発生しました。
明治以降、荒川最大の出水となるこの洪水は、利根川の洪水と合わせて埼玉県内の平野部全域を浸水させ、東京下町にも甚大な被害をもたらしました。
記録に残る埼玉県内の被害は、破堤945箇所、死者・行方不明者347人、住宅の全半壊・破損・流失18,147戸、床上浸水59,306棟、床下浸水25,232棟にものぼりました。(荒川上流河川事務所HPより)
水が引いて地面が見えるようになったのは、12月だったそうです。
かつてない大洪水に、明治政府は「臨時治水調査会」を設け、抜本的な治水計画にのり出しました。
荒川は、国が直轄事業として改修すべき河川に採択され、「荒川改修計画」が立てられました。荒川下流部では、岩淵水門から下流に、隅田川(当時の荒川)と分派する約21kmの放水路を新たに開削することが決定し、大正2年から昭和5年まで17年の歳月をかけて工事が行われました。
荒川上流部の改修工事は、大正9年に工事を開始し、37年の歳月をかけて昭和29年に完工を迎えました。荒川上流部の治水を考える際のポイントとなる、横堤や広大な河川敷は、この時の改修工事によって生まれたものです。(荒川上流河川事務所HPより)
「横堤(よこてい)」とは
「横堤(よこてい)」とは川に並行して築かれる本堤に対して、ほぼ川の流れに直角に横方向に築かれた堤防です。
27本の横堤(右岸側13本、左岸側14本)が建設され、2017年現在25本の横堤が存続しています。
日本では、荒川のみに見られる堤防で、洪水時に水の流れを受け止め流れを緩やかにして、さらに広い河川敷を設けることにより、遊水機能と流量調節を行い、下流の被害を軽減します。
記録的な強風と大雨をもたらした大型の台風19号「ハギビス」ですが、この荒川の「横堤」と「広大な河川敷」が、人口の密集する首都東京などを、洪水流から守ってくれたんですね。
荒川河川敷の大宮武蔵野高校グランドと埼玉栄総合グラウンドの現在の様子(10/13 15:27時点)#台風19号#荒川 pic.twitter.com/N4C5bJHWqz
— はるぱっか (@ga_dagada) 2019年10月13日
埼玉栄の総合グランドが水没…
荒川の河川敷にあるから仕方ない…とは言うけど
普段ここで部活してる生徒にしてみたらショックだろうな。 https://t.co/EMarO9V2xt— ミニマルフリック (@kaz32029) 2019年10月14日