小説家で法政大学教授の中沢けいさん(59)の「韓国は8つも偵察衛星を持っている」というツイートが話題になっています。
日本は8機の偵察衛星を運用中
日本はIGS(情報収集衛星)として、光学衛星とレーダー衛星を打ち上げています。
2018年6月12日、三菱重工業と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、政府の情報収集衛星「レーダー6号機」を載せたH2Aロケット39号機を鹿児島県の種子島 宇宙センターから打ち上げました。衛星は予定の軌道に入り、打ち上げは成功しました。
情報収集衛星は、日中の雲のないときに地表を細かく見ることができる「光学衛星」と、あまり細かくは見られないものの、夜間や雲があるときでも観測できる「レーダー衛星」の2種類がある。
打ち上げは2003年から始まり、打ち上げ失敗で2機が失われたものの、これまでに15機が打ち上げられ、現時点で光学衛星が3機、レーダー衛星が5機の、計8機が稼働しているとされる。今後、さらに新しい衛星の打ち上げも計画されている。
(米朝首脳会談の裏で、日本が打ち上げた事実上の「偵察衛星」の目的とは ニューズウィーク日本版 2018.06.22)
ニューズウィークの記事によると、日本の「事実上の偵察衛星」である情報収集衛星の打ち上げ計画は、1998年の北朝鮮のテポドン発射が契機とされています。
偵察衛星の性能などについては、各国の政府は秘密にしていて、その詳細はわからない部分もあります。
「韓国は8つも偵察衛星を持っている」ことを知らない人たちに支持される首相
中沢けいさんが、8月23日に、
「韓国は8つも偵察衛星を持っていることを知らない人がぞろぞろ出てきた。そんな人たちに支持される首相は自分の政府が出した「個人賠償権は残っている」との見解を忘れている。」
とツイートされて、話題になっています。
韓国は8つも偵察衛星を持っていることを知らない人がぞろぞろ出てきた。そんな人たちに支持される首相は自分の政府が出した「個人賠償権は残っている」との見解を忘れている。https://t.co/t7LemvJTDV
— 中沢けい (@kei_nakazawa) 2019年8月23日
このツイートは8月24日午前9時18分現在、522リツイート、384いいね、もされて多くの人たちに拡散されています。
このツイートは次のような構造になっています。
- 韓国は8つも偵察衛星を持っていることを知らない人
- そんな人たちに支持される安倍首相
- 安倍首相は自分の政府が出した「個人賠償権は残っている」との見解を忘れている。
意訳:「韓国は8つも偵察衛星を持っている」ということすら知らない情弱の人たちに支持される安倍総理は、「個人賠償権は残っている」との見解を忘れているような、バカだ。
中沢けいさんのツイートには、論点が2つあります。
1つ目は、安倍総理の支持者は、「個人の請求権は残っている」けど、請求先は韓国政府、と思っているわけですが、その切り取りではないかということ。
「賠償権」ってなんだろ?
「請求権」のことかな?個人の請求権は残っているが、その分のお金は日韓請求権協定の中でまとめて韓国政府に支払い済みと整理されているので、韓国国民各個人の請求先は韓国政府ではないのかな
— 平凡な会社員 (@Ordinary_Man0) 2019年8月23日
その個人賠償を韓国政府に任せることで合意して韓国政府にまとめて支払っています。個人賠償は残っていてもそれを韓国国民に対して支払うのは韓国政府の責任です。都合の良い「個人賠償権は残っている」だけを記憶して前後が抜け落ちてるのか切り取ってるのか知りませんがお忘れなく。
— ハイゴッグ愛好家 (@Monja4444) 2019年8月23日
2つ目は、「韓国は8つも偵察衛星を持っている」は、真実か?
こちらは、多くの人がデマだと指摘しています。
デマ流すな笑
地球観測がメインの役割の衛星が三つ持ってるだけだろ?
専門の偵察衛星は持ってない。
2022年までに偵察衛星の実用化を目指してて、それまでの期間ないから他国に「貸してくれ~」って頼んでたと思うよ。
— 馬超 (@6hl7PEz1wIug4qn) 2019年8月23日
中沢けいさんは出典として、ウォール・ストリート・ジャーナルの英文記事をあげられています。
もとはこの記事。https://t.co/1TtmGHXwGx
— 中沢けい (@kei_nakazawa) 2019年8月23日
ウォール・ストリート・ジャーナルの記事には、
South Korea may not benefit as much from access to information from Japan’s eight reconnaissance satellites, which monitor North Korea and track missile launches.
と書かれているようです。
日本の8機の偵察衛星とあります。中沢けいさんの誤読のようです。
それに、「韓国は8つも偵察衛星を持っていること」を知ったのがこの記事だとしたら、中沢けいさんも今までは知らなかったのではないでしょうか?
しかも間違いですし。
その後、中沢けいさんは、誤読に気が付かれて次のようにツイートされています。
誤訳だったのか。教えてくれた人、どうもありがとうございます。
— 中沢けい (@kei_nakazawa) 2019年8月23日
お礼は結構ですので
この誤訳?😊を前提にして展開した理屈を正してみるとご意見変わりませんか?どうなります?South Korea may not benefit as much from access to information from Japan’s eight reconnaissance satellites, which monitor North Korea and track missile launches.
— 呟き坊主 (@twBeginerJP) 2019年8月24日
ウォール・ストリート・ジャーナルは日本語版もあるのに、どうして無理に英語版を読まれているのでしょう。
それにしても、「韓国は8つも偵察衛星を持っていることを知らない人たちに支持される首相」という内容のツイートは522リツイートもされて、安倍政権に批判的な人たちに共有されてしまいました。
「韓国は8つも偵察衛星を持っている」の部分だけ訂正しても、それを元に構成されたツイートの印象は残るはずです。
「印象フェイク」ではないでしょうか。
誘導された誤ったネガティブな印象は簡単に消せないと思うのですが、どうされるのでしょうね。
ミスを楽しんだ皆さん 感謝してください
韓国は8つの衛星を持っているというのは誤訳でした。ごめんなさい。教えて下さった人、どうもありがとう。ミスを楽しんだ皆さん、よい材料を提供したんだのだから感謝してください。御礼はいりませんから。 https://t.co/mgKWFHSwoO
— 中沢けい (@kei_nakazawa) 2019年8月23日
フェイクニュース、デマの報道
そういえば、特定政治家への誹謗中傷、フェイクニュース、デマについて、もっと報道してもらいたいというご意見のツイートがありました。
フェイクニュース、デマの報道には朝日以外の新聞社にも力を入れてもらいたい。災害時のデマも毎回繰り返されている。特定政治家への誹謗中傷もひどい。ヘイトスピーチが生まれるのもデマ、誹謗中傷などから。このような事象の報じ方をぜひ研究してもらいたい。
— 中沢けい (@kei_nakazawa) 2018年9月15日
※9月1日発売の高橋洋一さんの新刊です。