(写真は、さいたまスーパーアリーナ File:Japanese Saitama Super Arena.jpg ウィキメディアコモンズ)
沢田研二さんのコンサート中止は、さいたまスーパーアリーナの株主に東京電力がいるので、「反原発の署名」を会場側から断られたのが原因だ、という話がツイッターに流れ、一部のまとめサイトなどが記事にしています。
本当でしょうか?
さいたまスーパーアリーナのHPに東電の名前はない
さいたまスーパーアリーナのホームページを10月19日に確認してみると、そこの会社概要にある出資者一覧に、東京電力ホールディングスの名前はありませんでした。
『さいたまスーパーアリーナの株主は東電』というツイートが流れているけど、HP確認したら、東電は入っていなかった。
どういうこと?https://t.co/fkLH73GdPa pic.twitter.com/xRDg6PO1Dt— 以下略ちゃん™ (@ikaryakuchan) 2018年10月19日
持ち株は埼玉県が30%で 社長はサッポロビールから
埼玉県議会、2018年3月16日の予算特別委員会での山下勝矢委員は次のように述べています。
主要な施策3ページのさいたまスーパーアリーナにつきまして質問いたします。
さいたまスーパーアリーナは、649億円の巨費を投じまして平成12年に竣工しました、いわば埼玉県民の誇るべき財産でもあります。
その運営に当たりましては、第三セクターである株式会社さいたまアリーナがその運営を県から委託を受けております。
その会社の持ち株割合は、埼玉県30%、サッポロビールのサッポロホールディングスが24%、東芝が10%、以下、コカ・コーライースト、パレスホテルが8%等々となっております。
ここで前置きとしまして、現在、サッポロから派遣されております社長さんはじめプロパー職員等々には、埼玉県の看板でありますさいたまスーパーアリーナの発展によく貢献をいただいておりますという前提で、以下のこれから質問を行いたいと思っております。(埼玉県 平成30年2月予算特別委員会 03月16日-07号)
山下勝矢委員の発言から次のことがわかります。
- さいたまスーパーアリーナは、649億円の巨費を投じて平成12年(2000年)に竣工した
- 第三セクターである株式会社さいたまアリーナが運営
- 持ち株割合は、埼玉県30%、サッポロビールのサッポロホールディングスが24%、東芝が10%、コカ・コーライースト、パレスホテルが8%とつづく
- 社長は、サッポロビールから派遣
東電が大株主というのは間違い
「さいたまスーパーアリーナの株30%を東電が持っている大株主」というのは間違いです。
とはいえ、ガス会社、電話会社、たばこ会社が出資しているのですから、電力会社も少しは出資していて不思議はありません。
どうなっているのでしょうか。
ウィキペディアの記載をそのまま信じた?
調べてみると、ウィキペディアの2013年8月10日 (土) 03:54 の版から、出資者として東京電力が書き込まれていたことがわかりました。
このウィキペディアの記載は、2018年10月19日 (金) 08:32(UTC)に次のように更新されています。
最新の情報でないことに気がついた人が書き直したようです。
どうも、ツイッターで「東電が株主だ」とツイートした人は、ウィキペディアの記載だけを見てツイートをしたようです。
ウィキペディアは、誰でも編集ができるサイトですので、参考にはなりますが、正しくない記載も少なくありません。
かつては東電も出資していた
さらに遡って調べてみると、2011年4月の「出資者に東電の名前があった」とのツイートを見つけました。
ウィキペディアに書かれたのは2013年8月からですから、このツイートは信憑性が高いです。
2011年4月には、東電も出資者に名前があったようです。
持株会社体制に移行した東京電力
東京電力は、2011年の東日本大震災による事故で、特別損失として、約1兆7000億円を計上し、当期純損益は約1兆2,000億円の最終赤字になりました。
2012年7月に、原子力損害賠償支援機構を割り当て先とする優先株式を発行し、日本国政府から1兆円の公的融資の注入を受け、実質的に国有企業化されました。
2016年4月1日には、 電力自由化に際し、持株会社体制に移行し「東京電力株式会社」から「東京電力ホールディングス株式会社」に社名を変更しています。持株会社体制とは、社内の各部門をそれぞれ独立の会社にすることです。
この持株会社に移行する段階で、さいたまスーパーアリーナの出資者から、東京電力が外れたのではないかと、推測されます。