沖縄タイムスの阿部岳記者の記事のジェネリック医薬品の認識に重大な問題点あり

新しい医薬品の開発には長い研究期間と膨大なコストがかかるため、開発ができるのは大手の医薬品メーカーに限られています。

医薬品を開発したメーカーは、医薬品の構造や製造方法、用途について特許権を取得し、20年間はその薬の製造・販売を独占することができます。

特許が切れたあと、その薬を他の医薬品メーカーが製造・販売するのが「ジェネリック医薬品(後発医薬品)」です。

ジェネリック医薬品は開発費がかかっていませんから、安い価格で販売することができます。

一見、安いことは良いことのように思えますが、医薬品を開発しても儲からないということになってしまうと、新薬を作るメーカーはなくなってしまいます。

あるいは20年間だけで開発費と利益を回収しなくてはならないということになると、新薬の値段がべらぼうに高くなってしまうことになってしまいます。

先発医薬品と後発医薬品の利用者数が、ほどよいバランスになることが理想です。

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ジェネリック医薬品は差別?

沖縄タイムスが10月15日に「ジェネリック医薬品と生活保護」についての記事を配信しました。

筆者は阿部岳記者です。

沖縄タイムス+プラス

 健康保険証に、「ジェネリック医薬品を希望します」という小さなシールを貼っている。特許が切れた薬の後発品で、値段が安い。…

 

この記事の中で、問題があると考えられるのは、次の2つの記述の文章です。

▼医療費抑制は国家的課題。後発薬のメリットがそんなに大きいなら、一律義務化した方がいい。「生活保護を受けている患者だけは安い薬で我慢しろ」というのは明白な差別である(沖縄タイムス)

「後発薬のメリットがそんなに大きいなら、一律義務化した方がいい。」と阿部岳記者は書いています。

ジェネリック医薬品は価格の安さがメリットです。ジェネリックが安いのは、「主成分」が同じでも開発費用がかかっていないからです。

「生活保護を受けている患者のジェネリック義務化は差別」という論調のために、「一律義務化した方がいい」と書いているようです。

ジェネリック医薬品だけに一律義務化したら、先発薬が売れなくなってしまい新薬を開発するメーカーはなくなってしまいます。ある程度は先発薬の利用者は必要です。

いっぽう生活保護ではない人も、価格を安くしたい場合はジェネリック医薬品を選択するのですから、「主成分」が同じである以上、ジェネリックだから特に差別ということではないように思います。

▼生活保護を受けている60代男性は言う。「結局、早く死になさい、ということなんだろうね」。男性も、これまでは働いて税金を納めてきた。小さなきっかけで困窮することは誰にでもある。いざという時に頼れない国家とは何のため、誰のためにあるのだろうか。(沖縄タイムス)

こちらの文章は特に問題です。

先発薬の方が必ずしもよく効くというわけでもありません。ジェネリック医薬品だから早死にするというような書き方はおかしいのではないでしょうか。

阿部学記者のこの記事は、ジェネリック医薬品に対する不安だけを根拠なく扇動しています。問題のある文章だと思います。

 

まれに効き方が違うことはある

先発医薬品に与えられている特許は、主に4種類あります。

  1. 新しい化学物質に与えられる「物質特許」
  2. 特定の物質に対する新しい効能・効果に与えられる「用途特許」
  3. 物質の新しい製造方法に与えられる「製法特許」
  4. くすりの安定化など製剤上の新しい工夫に与えられる「製剤特許」

ジェネリック医薬品を開発・販売するためには、1と2の物質特許と用途特許の期間が満了している必要があります。これによりジェネリック医薬品は先発医薬品と「主成分」を同じにすることができます。

ただしこの時点では、まだ製法特許と製剤特許の特許有効期間が残っている場合も多くあります。

その場合は、錠剤やカプセルの形が違っていたりします。

有効成分は先発医薬品と同じですが、たとえば錠剤の形を作るために添加する成分など、添加剤の種類が違っていることがあります。

この製法の違いにより、「くすりが効きすぎる」「効きが弱い」「副作用の出方に違いがある」という製品があるようです。

先発薬とジェネリック医薬品で微妙な違いがあったとしても、くすりというのは、なかなかピタリと合うものは少ないものです。どちらが優れているかはよくわからないことが多いでしょう。

ただ日本におけるジェネリック医薬品の承認基準は、他の国と比べて圧倒的に厳しいものとなっています。したがって、その厳しい基準をクリアしたジェネリック医薬品は、かなり信頼のおけるものになっていることも確かです。

阿部岳記者の記事のように、いのちにかかわるほど日本のジェネリック医薬品の品質が劣るということはないのです。



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