「政府側がドタキャン」発言 1月16日午後
2018年1月16日(火)午後の菅官房長官記者会見での東京新聞 望月衣塑子記者の質問全文です。
共産党の小池氏の発言をもとに政府批判
ICAN(アイキャン)の事務局長が求めていた安倍首相との面会を、まあ、政府が断ったという関連での質問です。
えー昨日、共産党の小池氏が会見の場で、18日まで事務局長は日本にいると、首相は17日に帰国するということで会えるのではないかと、これだけですね、被爆者の運動が国際的に評価され、ノーベル平和賞を受賞できた、日本の首相であれば心から喜ばなければならないのではないかと、相手側が会いたいと言っているにかかわらず会わないというのはどういうことなのかと、恥ずかしいというような会見でご発言出ております。
これ日程調整をですね、なんとかして、この核なき平和を互いに前進させるためにも、予定を変えてですね、会うということを検討していないのか、また首相が会えない場合ですね、ナンバー2である菅さんご自身がICANの事務局長と会うということはご検討していないのか、お聞かせください。
いずれにしろこの件については昨日も質問があって、昨日答えた通りであります。
「政府側がドタキャンをした」の既成事実化ねらう?
まあ、あくまでも日付の関係だというご説明だけでしたけれども、まさにこのノーベル賞を取ったこの団体をある意味、敬意を持って受け入れるためには、日本の首相が会わないのではなく、会うことのほうがより世界にですね、メッセージが発信できるのではないかと思うんですが。
今回のこともふまえまして、そして一昨年の11月の時にですね、国連人権委のデビッド・ケイさん、特別報告者が、
(事務方「質問は論点を絞って簡潔にお願いします。」)
菅さんや高市総務相とご面会をしたいという時も政府側がドタキャンをしたという経緯がございました。
こういうことをふまえまして、やはり政府、国際的にですね、高く評価されている方々と、やはり政府の要職にある方々がきっちりと会って、お話をし、世界にメッセージを発信していくということの必要性というのはどの程度いま政府は真剣に考えているんでしょうか。
事実に基づいて質問してください。
以上です。
感想
共産党の小池氏の発言をもとに政府批判
共産党の機関紙、しんぶん赤旗の記事からの質問のようです。
日本共産党の小池晃書記局長は15日の記者会見で、ICANのフィン事務局長からの安倍晋三首相との面会の要請を拒否した日本政府の対応について問われ、「本当に恥ずかしい」と厳しく批判しました。
面会拒否“恥ずべき”/ICAN対応で首相を批判 小池氏 https://t.co/K2MR6KIU2i
— 以下略ちゃん™ (@ikaryakuchan) 2018年1月16日
「安倍首相は会えるはずだ」と一方的に決めつけて批判している記事ですが、菅官房長官はすでに15日に「日程の都合で、それ以上でもそれ以下でもない」と答えているのですから、しつこく共産党の主張を持ち出して菅官房長官に問い詰める目的がよくわかりません。
やはり、この質問も質問の体をなしていません。
菅官房長官は政府の発言としてこれ以上のことを回答できるはずがないのですから、「日本政府の対応が本当に恥ずかしい」という共産党の小池氏の発言を宣伝するだけが目的の質問になっているように思えます。
「政府側がドタキャン」?
さらに問題なのは、2015年11月のデビッド・ケイ氏との面会の件を「政府側がドタキャンをした」という一部メディアが書いた偏向記事を利用して、望月衣塑子記者が「ドタキャン」を既成事実にするために、さり気なくねじ込んできた発言です。
これにはさすがに菅官房長官も憤った様子で「事実に基づいて質問してください。」とだけ答えています。
「ドタキャン」は2015年11月22日の日刊ゲンダイなどが「政府がドタキャン」と書いた記事が元になっています。
国連の「表現の自由」をめぐる訪問調査を日本政府がドタキャン?
国連の「表現の自由」調査を延期…安倍政権が“隠したい”コト
2015年11月22日
https://t.co/LjdPMf2sFB— 以下略ちゃん™ (@ikaryakuchan) 2018年1月16日
「予算編成作業などの関係で、政府として十分に受け入れ態勢を整えることが困難だった」ため、2週間前にキャンセル(延期をしてほしい)の連絡がジュネーブ国際機関の日本政府代表部から入ったという記事です。
その後、デビッド・ケイ氏は2016年4月に来日しています。来日はしていますので延期の要請ですね。
IWJの記事によると、さらにデビッド・ケイ氏が2016年2月、「電波停止」発言の真意を確かめるため、高市早苗総務相に何度も面会を申し入れたが、「国会会期中」との理由で実現しなかった、ということです。
面会の約束じたいが成立しなかったわけですから、高市早苗総務相との面会の話もドタキャンとは異なります。
望月衣塑子記者は2015年11月の延期要請の話と、高市早苗総務相との面会の話をごちゃまぜにしているようで、事実関係がめちゃくちゃです。政府批判ありきで質問しているので、このような誤った事実認識になるのでしょうね。
そもそも2週間前は、ドタキャンなんでしょうか?
ドタキャンとは、土壇場でキャンセルをすることの俗語です。では、土壇場とはいつまでのことなのか? その定義は人それぞれで明確なものがありません。
定義は人それぞれでしょうが、少なくとも「他の予定に変更が不可能な状況」でのキャンセル、という共通認識はあると思います。
Woman Insight編集部さんが2016年に実施した、どこから「ドタキャン」?というアンケートでは、
- 当日の朝……51%
- 前日……31%
- 約束の1時間前……15%
- 2~3日前……3%
という結果が出ています。
「他の予定に変更が不可能な状況」という意味から、ドタキャン、土壇場でのキャンセルとは、せいぜい「当日、前日のキャンセル」の意味と多くの人が認識していることがわかります。
2週間前のキャンセルをドタキャンというのは無理があると思います。
「ドタキャン」を印象づけるための、この望月衣塑子記者の「政府側がドタキャン」発言は、官房長官記者会見の場では不適切な発言であると思います。